Shotz Sports Nutrition

栄養補給のうそ、ホント by ドクター彦井

彦井浩孝 画像
彦井浩孝 Ph.D.(博士)(運動生理学・運動栄養学)
勘違いや間違いだらけの補給のあれこれを分かりやすく解説します。
Vol.11 辛いときこそカフェインの助け
 朝の一杯のコーヒー。習慣的にコーヒーを飲む人にとって目覚めのモーニングコーヒーは欠かせません。コーヒーに含まれるカフェインが交感神経系に作用して脳を覚醒してくれます。カフェインには体脂肪の分解を促進してグリコーゲンを節約する働きや疲労感を軽減する鎮静作用などのあることがこれまでの研究で知られており、カフェインの運動パフォーマンスを高める効果が期待されます。
 実際、ロングのトライアスロンやウルトラマラソンなどではカフェインを摂取するアスリートも少なくないようです。特にレース後半でカフェインを摂取することはペース維持や後半の「踏ん張り」をサポートする目的として有効と言えるかもしれません。ロングや高強度のレース後半では活動筋のグリコーゲンが著しく減少している場合がほとんどです。筋グリコーゲンの枯渇はパフォーマンスを大きく損なう原因です。レース後半の筋グリコーゲンの減少はパフォーマンスの低下をもたらします。
 これまでの研究では、たとえ筋グリコーゲンが減少してもカフェイン摂取によりパフォーマンスが回復したことが報告されています(Laneら、2013年)。この研究では、トライアスリートらにあらかじめ100分間のサイクリングで筋グリコーゲンを消費させておいた上で40分間のパフォーマンステストを行わせましたが、筋グリコーゲンが減少した状態では、正常な状態と比較してパフォーマンス(パワー)が8%程度低下してしまいました。
 しかし、このような状態でもパフォーマンステスト前にカフェインを体重1kgあたり3mg摂取することによってパフォーマンスを3.5%回復させることができました。筋グリコーゲンが十分にある状態まで完全にパフォーマンスを回復させることはできませんでしたが、カフェインの摂取により脂肪酸の消費が高まり、これが筋グリコーゲンの減少を補いエネルギー消費を維持したと考えられています。
 このように、ペースや運動強度の維持が困難になるレース後半などにカフェインを摂取することによって、それらの低下を補ってくれる可能性があると言えそうです。また、体脂肪の消費を促し、筋グリコーゲンを節約するためにもカフェインの活用が有効と言えるでしょう。
 ただし、通常、体重1kgあたり3mgから6 mgが適当とされており、レースでの使用の前には必ずトレーニングであらかじめ試しておくことが大切です。また、摂れば摂るほど効くものでもなく、1日あたり300-400 mg以上の摂取は胃腸の調子を崩したり頭痛などの原因にもなったりしますので摂取には注意が必要です。ショッツのフレーバーの中にはカフェインが80mg含まれているものがあります。たとえば、体重が60キロのアスリートであれば、180mg-360mg程度のカフェイン摂取が有効ですので、カフェイン入りショッツを3個から4個程度摂ればカフェインの効果が期待できると言えそうです。

Vol.10 運動中の適切な糖質摂取量は!?
 マラソンシーズンが盛り上がりを見せている中、少しずつ温かい日を増え始め、走ったり自転車に乗ったりするにはちょうどよい季節になってきました。汗の量も少しずつ増え、長時間の運動時は糖質補給に加え、水分や電解質(ナトリウム)補給もより重要になってきます。
 運動中に消費されるエネルギー源の主体である糖質は、血中のブドウ糖(血糖)、筋肉や肝臓に蓄えられているグリコーゲン、そして口から摂取する糖質が主なものとなります。運動中、血糖が筋肉に取り込まれて利用され血糖値が下がると、肝臓グリコーゲンをブドウ糖に変換して血中に放出し血糖が維持されます。筋肉内に存在するグリコーゲンは活動する筋肉で直接利用されるため即効性が高い一方、消耗すると疲労感が強くなりパフォーマンスに影響が出ます。しかも、血糖やグリコーゲンの体内量には限りがあることから、運動時間が長くなると外からの糖質摂取が不可欠になります。
 適切に糖質(ブドウ糖)摂取を行って血糖を維持することができれば、体内のグリコーゲンを節約することができます。これによって、グリコーゲンの枯渇を防ぎ、疲労を抑えてパフォーマンスを維持することができます。
 では、どれぐらいの糖質(ブドウ糖)を摂取すればよいのでしょうか。これまでの研究では、1時間に60グラム(1分間に1グラム)のブドウ糖摂取は、同30グラム、90グラムの摂取と比較して、2時間の運動における筋グリコーゲンの消費を抑える節約効果があったと報告されています(Wallisら。2007年)。最近の研究では、1時間に60グラムまたは75グラムのブドウ糖摂取を行ったところ、後者ではかえって運動中(2時間)の筋グリコーゲンの消費が高まりパフォーマンスに影響が出たことが示されています(Kingら、2018年)。60グラムの糖質はショッツエナジージェル約2個分に相当します。また、1時間に20グラム、39グラム、64グラムのブドウ糖摂取による効果を比較したところ、運動中(2時間)の肝グリコーゲンの消費量は同20グラムで最も多く、逆に同39グラム、64グラムでは消費が抑えられパフォーマンスが高かったことが確認されています(Newellら、2017年)。
 このように、運動時間が2時間を超える場合は糖質(ブドウ糖)摂取が必要ですが、闇雲に摂取すればよいわけではなく、多過ぎても少な過ぎても効果が低下する点に留意して摂取することが大切です。ブドウ糖摂取の基本は、これまでの研究により1時間に60グラム(1分間に1グラム)が適量と考えられますが、実際に試してみて胃腸の状態を確認するなど、運動環境や個人差に配慮して補給戦略を考えるとよいと思います。

Vol.9 ジェルによる糖質摂取は効果的!?
 レース中の糖質補給は、その距離や競技時間が長くなればなるほどもはや常識です。では、どんなもので糖質補給を行っているかというとこれは人それぞれ。ドリンクタイプの飲料で摂取する人もいれば、バーのような固形物で摂取する人もいます。最近はジェルタイプのものを利用する人が非常に多くなってきました。あるいは、これらを組み合わせて摂る人も多いようです。
 ドリンク、バー、ジェルではどのタイプの糖質補給食が有効なのでしょうか。糖質補給を行う目的では効果はほとんど変わらないように見えますが実際にはどうなのでしょうか。昨年発表された研究報告では、12名のよくトレーニングされたサイクリストに、ドリンク、バー、ジェル、ミックス(3つの組み合わせ)の何れかを摂取(運動中20分ごと。1時間あたり80グラム)させたときのそれぞれの効果について比較しています(GuillochonとRowlands、2017年)。糖質摂取のタイプによる効果の違いは、140分間の最大運動時のパフォーマンスと胃腸の状態について比較評価されました。結果、パフォーマンス(最大パワー)が一番高かったのはジェルで、バーが最も低いことが示されました。ミックスもバーに次いで低い値を示しています。また、バーはジェルと比較して、吐き気や胃の膨満感、腹部けいれん、主観的疲労感が強いこともわかりました。
 このように、糖質補給食のタイプによってパフォーマンスや胃腸への負担が異なるようです。中でもジェルが最もパフォーマンスへのマイナスの影響が少なく、また胃腸への負担も小さいことが考えられます。固形物のバーだと消化や吸収により多くのエネルギーと時間を要するため胃腸への負担が比較的大きくなり、またドリンクだと同量の糖質を摂取するために多くの水分も同時に摂取することでやはり胃腸への負担が大きくなることが関係していると思われます。
 レース中の胃腸への負担はパフォーマンスに影響をもたらします。長距離のレースでは、糖質補給が欠かせませんが、その方法を誤るとパフォーマンスが損なわれ、それまでのせっかくのトレーニングが台無しになることもしばしば見受けられます。上述の研究では、ジェルタイプの糖質補給食の優位性が示されていますが、ジェルの摂取においても適切な方法で行うことが必要です。ジェルを摂ると口の中が粘ついて気になることから、同時に水分を必要以上に摂ってしまうことがあります。これでは、濃度の高いスポーツドリンクを摂取したことと同じになり、ジェルの優位性を生かせないばかりか、かえって胃腸への負担が大きくなり、結果、パフォーマンスを損なうため注意が必要となります。ジェルを摂取する際には、口をすすぐ程度の水分摂取は問題ありませんが、それ以上の水分摂取はタイミングをずらして行うことがジェルの有効性を生かすことにつながります。

Vol.8 運動時のアミノ酸摂取は有効か
 マラソンシーズン本番です。愛好者の多いマラソンですが、規模の拡大をもたらした一時的なブームは去り、今は安定した人気の中で年々経験を重ねるランナーも増えてきているようです。マラソンに関する情報も膨大なもの。栄養補給に限っても、とても多くの情報がインターネット上に満載です。情報が多すぎで何をどれだけ摂取したらよいのか正しい判断ができなかったり、あれもこれも必要に思えて気がついてみるとさまざまな種類の栄養素を摂っていたりなど、栄養補給についての考え方をかえって複雑なものにしているようです。
 たとえば、ランナーにも人気のある栄養素のひとつにアミノ酸があります。30年ほど前までは、調味料か旨みの成分ぐらいとしてしか認識されていませんでした。一部、「たんぱく質合成に不可欠な栄養素」との理解からボディビル系の愛好者らがサプリメントとして摂取を始めていたぐらいでした。
 しかし、国内メーカーの開発により90年代中盤あたりから比較的飲みやすいパウダー状のものが製品化され、また用途もそれまでのボディビル系から持久系スポーツへも広がりを見せるようになり、メーカーの影響力や国内研究者の論文発表等もあって、現在では国内の多くの持久系アスリートにまで「パフォーマンスに役立つ栄養素」としての認識を高めるに至っています。
 立場的に「アミノ酸って本当に効くの!?」といった声を耳にすることがよくあります。果たして、アミノ酸はパフォーマンス向上に有効なのでしょうか?高強度の運動は筋に損傷を与え、その修復のために筋たんぱく質の材料であるアミノ酸を運動後に摂取することは必要です。これがトレーニング適応を引き出すという意味ではパフォーマンス向上に有効と言えますが、一般的に多い使い方としての「運動中」の摂取についてはどうでしょうか。
 これまでの研究で、100kmウルトラマラソンにおけるアミノ酸サプリメントの筋ダメージへの効果が検討されています(Knechtleら、2011年)。ランナー28名を摂取群と非摂取群に分け、摂取群はレース前、コース中全17ヶ所のエイドステーションで合計52.5g(5g/時間)のアミノ酸サプリメントを摂取しました。結果、完走時間だけでなく、筋損傷のマーカーとなる血液データや筋痛の主観的評価にもアミノ酸摂取による違いが見られなかったようです。
 また、今年発表された系統的レビュー(システマティックレビューとも言われ、過去の関連研究論文の中で研究方法が一定基準以上のものだけを集めて包括的に分析評価する研究方法)では、アミノ酸(BCAA)が筋損傷の軽減に有効かどうか吟味されていますが(FouréとBendahan、2017年)、これまでの多くの研究の総括として高強度運動による筋損傷へのBCAAサプリメントの予防・軽減効果は乏しく、裏付けとなる根拠は見当たらないとしています。
 過剰に摂取されたアミノ酸はアンモニアの生成を促し、生体にとって有毒なアンモニアは肝臓で水溶性の尿素に変換された後、尿として排泄されます。このため、肝臓や腎臓に負担をかけやすく、また脱水を引き起こしかねません。上述の研究(Knechtleら、2011年)でも、アミノ酸摂取群では血中への尿素の排泄が多く、またこれが多いほど完走時間が遅くなる相関関係が示されています。
 アミノ酸摂取の運動からの回復期における有効性についてはたんぱく質の摂取同様、古くから確立されていますが、運動前、あるいは運動中については有効性を示す根拠が不十分と言えそうです。ただ、アミノ酸と一言で言っても、生体たんぱく質の合成に必要なものだけでも20種類あります。今後、これらの組み合わせによっては有効性が示されるものもあるかもしません。評判や人気だけで闇雲に摂取を試みるのではなく、その前にできるだけシンプルで正しい情報に目を向ける習慣もトレーニングと合わせて実践していただきたいと思います。

Vol.7 アイアンマン・マレーシア補給戦略
 すっかり寒くなりました。11月に開催されたアイアンマン・マレーシアに出場しましたが、現地は夏そのもの。当然、水分補給もエネルギー摂取も夏のレースを想定した戦略になります。
 これまで各地のショッツセミナーでもお話してきたとおり、エネルギー・水分補給の3つの原則:①エネルギーは、1時間あたり60gを上限に体重1kgにつき1gの糖質のみを摂取する、②水分はのどの渇きに応じてナトリウムと同時に摂取する、③糖質と水分は同時に摂取しない、に従って補給を行いました。
 具体的には、スイム中は何も摂取ができないため、スイム1時間前からにショッツエナジージェルを30分ごとに1個、合計2個(=約60g)を摂取し糖質の体内貯蔵を満タンにしてスタート。バイク中は、あらかじめバイクボトルに少量の水を加えて口から出やすいように用意したショッツエナジージェルをやはり30分ごとに1個(1時間で2個=約60g)、5時間40分のバイクパートで合計11個摂取しました。
 水分摂取は適宜のどの渇きに応じて行い、フラスコに用意したショッツエレクトロライトパウダー(10本飲みやすいように水で薄めたもの)を少量ずつ口に含み、水分といっしょに摂取しました。
 ランでも基本は同様です。フラスコに用意したショッツエナジージェル(カフェイン入り)をランスタート1時間後から摂取を開始し、その後30分ごとに1個(1時間で2個=約60g)、3時間40分のランパートで合計4個摂取。水分とナトリウム摂取も同じく、エイドステーションで手に入る200ml程度のペットボトル入りの水にショッツエレクトロライトパウダーを1本程度ずつ混ぜて摂取しました。
 結果、アイアンマントライアスリートでは90%が体験すると言われている胃腸系の不快感はまったくなく、しかも同じエイジのアスリートと何度も抜きつ抜かれつのレース展開ではエネルギーと集中力を最後のゴールスプリントまで持続させることができました。胃腸系のトラブルを回避しエネルギーを持続させることができたのは、上述の3つの原則をシンプルに守ることに徹したからですが、ショッツエナジージェルとショッツエレクトロライトパウダー、そして水分以外はいっさい摂取せずに通したこと、摂取目標を定めて過剰摂取を回避したことも好影響をもたらしたのだと思います。
 目標としていたアイアンマン・ワールドチャンピオンシップ(ハワイ島コナ)の出場権の獲得は次回のレースに持ち越しとなりましたが、今回のようなハードなレース展開でもこの補給戦略が正しいことをますます確信することができました。また、アスリートのパフォーマンスをエネルギー面から支えるといったエネルギー補給食の本来のミッションを遂行する上で、ショッツがいかに適任であるかを再確認した今回のレースとなりました。

Vol.6 この秋「グリコーゲンタンク」を満タンにしてレースに臨みましょう
 すっかり涼しくなり、スポーツを行うには最適な季節となりました。「スポーツの秋」ですね。この秋も各地でランニングなどの大会が多く開催されています。
 さて、10月に開催されたある100キロウルトラマラソンに初めて挑戦するランナーから相談を受けて、栄養補給のアドバイスを行いました。フルマラソンの経験は少なくないものの、栄養補給については常に試行錯誤されていたようで、毎回、胃腸の調子を崩していたとのことでした。
 完走に向けてのトレーニングの中では、特にロング走の際にアドバイスをもとに糖質と水分摂取のシミュレーションを行っていただき、これまで糖質と水分をいかに多く摂り過ぎていたかを認識していただきました。
 レース本番は、雨降る一日となりましたが、気温が低く発汗量が少なくなることもあり、水分摂取については摂り過ぎないようにだけ気をつけ問題ありませんでした。また涼しい分、胃腸への負担が減ったことも幸いし、糖質摂取についても事前に設定した補給プランを実行し、結果、胃腸の調子を崩すこともなく、見事、初完走を果たされました。
 ところで、アメリカスポーツ医学会が2016年に発表したポジションステートメント(公式声明文)「栄養と競技パフォーマンス」では、90分以上を要するスポーツにおいて、競技前にカーボローディングによってグリコーゲンの蓄積を促しておくことはパフォーマンスにとって有意義であるとされています。レース前48時間にわたる糖質主体の食事を摂ることが筋グリコーゲンの蓄積を促します。また、睡眠中に多く消費される肝臓グリコーゲンをレース直前1~4時間前の糖質摂取で補っておくことも有効です。このことは10時間以上に及ぶウルトラマラソンであっても非常に重要です。これらのアドバイスも今回のよい結果につながったのかもしれません。
 レース前48時間で行うカーボローディングでは、1日(24時間)で体重1kgあたり10~12gの糖質主体の食事を摂ることが筋グリコーゲンの貯蔵に最適な量とされています(アメリカスポーツ医学会「栄養と競技パフォーマンス」、2016年)。また、レース直前1~4時間前には体重1kgあたり1~4gの糖質摂取が肝臓グリコーゲン蓄積を促すと考えられています。shotzエナジージェルには1個当たり約30gの糖質(マルトデキストリン)が含まれています。レース前のカーボローディングでもshotzをうまく活用することで、「グリコーゲンタンク」を満タンにしてレースに臨むことができます。この秋のレースに向けて、パフォーマンス向上のためにぜひ実践してみてください。

Vol.5 疲労との闘い:エネルギー補給の基本
 暑さが少し和らいできました。とはいえ、まだまだトライアスロンシーズンは続き、その一方でマラソンシーズンも近づいてきています。少しずつ過ごしやすくなる中ではトレーニングの効率も上がります。トレーニングの質を高めるためにも、しっかりとした栄養補給が必要です。今回はエネルギー補給の話題です。
 運動中に消費されるエネルギー源の主なものは糖質と脂質です。運動強度や時間によってそれらが使われる割合は異なります。フルマラソンを4時間切るペースで走るランナーでは、全エネルギー消費量のおよそ7割から8割ぐらいは糖質によってまかなわれます。サブスリーで走る人になれば糖質消費の割合がさらに増え、5時間ぐらいで走る人では6割から7割ぐらいになるでしょう。
 いずれの場合も、運動中に消費されるエネルギー源の主体は糖質です。しかし、無尽蔵と言ってもよいぐらい豊富な脂質と比較して、糖質の体内貯蔵量は限られています。筋肉や肝臓に蓄えられている貯蔵型の糖質、グリコーゲンと血中に存在するブドウ糖(血糖)だけです。このことから、運動中は糖質を補給する必要があります。
 しかも、筋肉に蓄えられているグリコーゲンが消耗すると疲労感が強くなりパフォーマンスにも影響が出ます。したがって、できるだけグリコーゲンを節約する必要があります。ここに、疲労を抑えてパフォーマンスを維持するための糖質補給の意義があるのです。
これまでの研究では、1時間に60グラム程度の糖質補給が最もグリコーゲンの節約効果があったと報告されてます(Wallisら。2007年)。60グラムの糖質はショッツエナジージェル2個分に相当します。また、アイアンマンハワイに出場した59名のトライアスリートを調査した結果、平均で1時間当たり62グラムの糖質を摂取していたことがわかりました(Pfeifferら、2012年)。 しかも、フィニッシュタイムは糖質摂取量に反比例してよい結果を示しています。
 このように、特に競技時間や運動時間が2~3時間を超えてくるエンデュランススポーツでは糖質補給が必須です。前回お話した水分およびナトリウム摂取と合わせて補給を考えることが大切です。栄養補給も競技の一部です(トライアスロンの場合は「第4」の種目です)。糖質と水分(ナトリウム)の摂取のタイミング(同時に摂ると胃腸にとって過大な負担になります)を考え、過不足ないように戦略を検討することが、疲労に打ち勝つエネルギー補給の基本と言えます。
Vol.4 暑さに負けない栄養補給の基本
 毎日、暑い日が続きます。こんな暑い日でもトレーニングやレースに取り組むアスリートのみなさんにはただ敬意を表するばかりです。トレーニングやレース中には、もちろん栄養補給は欠かせません。特に長時間にわたる場合、糖質、水、ナトリウムの適切な補給が重要となります。
 これだけ暑いと、のどの渇き以上につい水分を摂取したくなるものです。5日間で225キロ走るウルトラマラソン(気温32~40度)におけるランナーたち(74名)の水分摂取量を見ると、平均して1時間に約730mlであったと報告されています(Costaら、2013年)。発汗率は不明ですが、30度を超す気温の下では発汗率が1L/時間を超すことはまれではありません。しかし、これらのランナーの約4分の1に体重増加が見られたことから、この水分摂取量でも過剰になる場合のあることがわかります。しかも、水分摂取1L当たりのナトリウム摂取量は約0.3gとなり、ナトリウム摂取量の不足が推察されます(必要量の目安は水1L当たり2g。ショッツ・エレクトロライトパウダーなら5包程度)。実際に、42%に低ナトリウム血症(血中ナトリウム濃度が<135 mmol/Lの状態)が見られました。
 前回も述べましたが、暑さの中での水分摂取は過剰にならないように注意するとともにナトリウムの摂取量にも配慮する必要があります。加えて、糖質摂取も行う必要のある場合などはさらに注意が必要です。糖質摂取には、糖質ドリンク(いわゆるスポーツドリンク)や糖質ジェル(ショッツなど)が使われることが多いですが、ドリンクタイプのものだと必要な量の糖質を摂取するためには水分も摂らざるを得ず、水分摂取が過剰になってしまいます。その点、少ない容量で必要な糖質を摂取できるジェルタイプは有効です。
 9名のトライアスリートに糖質ジェルを摂取させて、パフォーマンスへの効果を見た研究報告がありますが(Sarebanら、2016年)、この研究ではトライアスリートに糖質ジェル(27g)と合わせて水分摂取(300ml)も行わせています。この結果、胃腸系に不具合が生じたことが指摘されています。つまり、糖質ジェルと水分摂取を同時に行ったことによって、胃腸に過剰な負担をかけてしまったようです。
 上述の水分摂取過剰とナトリウム摂取不足による低ナトリウム血症を防ぐと同時に、胃腸系のトラブルを回避するためにも、水分ととナトリウムの摂取量には配慮し、また糖質ジェルは水分と一緒に摂取しないこと(ただし、口をゆすぐ程度ならよい)が、暑さに負けない栄養補給の基本と言えます。
Vol.3 水分補給の最強パートナー「ナトリウム」
 運動には汗がつきものですが、暑くなってくるとその量(発汗量)が増えてきます。みなさんは、ご自身の運動中の発汗量をご存知ですか?これは簡便なテストを行うだけで推測することができます。まず運動前に体重を測ります。運動(1時間程度が望ましい)を行って、その直後に汗をしっかりとタオルで拭いてからもう一度体重を測ります。測定時はできればウェアを脱いで行うとより正確です。そして、運動前後の体重差を1kgあたり汗1Lに置き換えるとおおよその運動中の発汗量になります。もし運動中に何か水分を摂ったとすればその量を加えます(たとえば体重減少量が1kgで500mLの水分を摂ったのであれば1+0.5=1.5Lとなります)。最後に、運動を行った時間で割って1時間当たりの発汗量、すなわち発汗率(L/時間)を求めます。このテストを実際に競技が行われる同じような環境(気温、湿度など)と強度で行えば、競技中の発汗率を見積もることができるでしょう。
 運動中は筋肉のエネルギー代謝が促進されることにより熱が作り出され体温が上昇します。これに環境からくる熱(暑さ)が加わり、さらに体温が上昇します。このとき、体温上昇を抑える働きとして発汗作用が起こり、汗をかくことによって体温上昇を抑えようとします。しかし、水分補給を怠るとこの働きが不十分となり、体温の上昇を抑えきれずパフォーマンスが低下するばかりか高体温症や熱中症を引き起こすことにもなります。また、水分補給不足(脱水)は血液量を減少させ、結果、心臓循環機能に負担をかけることになり、これもパフォーマンスを損なう要因です。さらに、脱水は胃の内容物の腸への排出を損なうため、エネルギー不足になることもあります。一方で、高濃度糖(8%以上)のスポーツドリンクや、食物繊維、脂質、たんぱく質などの含まれる飲料を摂ることが水分そのものの小腸での吸収を妨げることになりますので、水分補給を行っていても脱水になる恐れがあり悪循環を助長しますので注意が必要です。
 水分補給量の目安は発汗量の2分の1から3分の2程度です。競技の場合、その量を練習中に試してみてお腹の調子が大丈夫か確認してから実践しましょう。また、水分補給には単なる水だけでなく、ナトリウム(食塩)を加えると小腸での吸収が促進されます。ただし、ナトリウムの量は多すぎても水分吸収を妨げますので、目安として1Lの水に加えるナトリウムの量は2000mg(食塩相当量約5g)以下にします(たとえば、ショッツ・エレクトロライトパウダーなら5包以下)。水とナトリウムの最強コンビで水分補給は最適なものとなります。
Vol.2 運動中に補給することが必要な栄養素とは何でしょうか? Part2
 スポーツや運動において必要な栄養素は、まずはエネルギー源となる糖質です。それを補給することは、パフォーマンスに直結することからも競技戦略や運動内容と同等に考慮する必要があります。競技時間の長いエンデュランスポーツ(持久スポーツ)やチームスポーツにおいては特に重要です。
 運動中には糖質以外にも摂取する必要のある栄養素があります。それは糖質同様に運動中に消費される水分とナトリウムです。水分とナトリウムは汗として体外に排出され、特に暑い環境の中では発汗量が多くなって体内の水分とナトリウムの損失が大きくなります。糖質は体内に蓄えられている分では限りがあり不足が生じるため外部から補給する必要がありますが(特に競技時間が2時間を超える場合など)、水分とナトリウムについては損失した分を取り戻すために摂取する必要があります。
 その一方で、運動中に摂取すべきでない栄養素というものもあります。たとえば、日常の食生活では不可欠とはいえ、たんぱく質や脂質、食物繊維などが含まれている食品を運動中に摂取するとお腹の調子を崩したり、腹部の不快感や腹痛の原因になります。これは、暑さの中、あるいは競技または運動時間が長くなればなるほど深刻になります。最大で17時間を要するアイアンマントライスロンでは実に30%のトライアスリートがレース中、胃腸に深刻な問題を抱えていると言われています。冬場のマラソンでは4%程度と言われますから、いかに暑さと競技時間の長さが胃腸に負担をかけるのかが理解できますす。そこに消化に時間のかかるたんぱく質や脂質、食物繊維などを摂取することで、その負担に拍車を掛けてしまうことは明らかです。
 いくら最適にトレーニングを行い最善のコンディションで競技に臨んでも、栄養補給戦略が不適切だとそれらの努力も台無しになりかねません。最高のパフォーマンスを発揮するためにも、今一度、栄養補給戦略を見直したいものです。
Vol.1 運動中に補給することが必要な栄養素とは何でしょうか? Part1
 運動中に栄養素を摂取する栄養補給の考え方には、「運動中に体内から失われる栄養素の補充」が基本になります。では、「運動中に体内から失われる栄養素」にはいったいどんなものがあるのでしょうか?
 運動中のエネルギー源は、主に糖質と脂質です。前者は血中を流れるブドウ糖(グルコース)と、筋肉や肝臓に蓄えられているグリコーゲンです。後者は、同じく血中を流れる脂質(中性脂肪や脂肪酸など)と、皮下脂肪などの脂肪組織に蓄えられる中性脂肪が主なものとなります。同じエネルギー源でも、糖質は体内に保存されている量が少なく、脂質はやせている人でも十分に多く保存されているところが大きな違いになります。
つまり、運動中に体内からより失われやすいエネルギー源である糖質を補給する必要があると言えます。逆に脂質は豊富に存在するわけですから、あえて補給する必要はないと言えます。また、これらのエネルギー源が利用される際にはビタミンやミネラルが酵素の働きを助ける補酵素として使われますが、これらは普段の食事で過不足なければ補給の心配はありません。
 エンデュランスポーツ(持久スポーツ)における糖質補給は今や常識と言えます。チームスポーツやパワー系スポーツでも試合の合間や競技前に糖質を補給する場面がよく見られます。マラソン参加者の4割以上がレース後半で「壁にぶち当たる(ヒッティングザウォール)」を経験していると言います。そして、その原因が筋グリコーゲンの枯渇にあることが知られています。
 筋グリコーゲンは、筋肉に蓄えられている糖質(ブドウ糖)のことです。グリコーゲンは肝臓にも蓄えられています。これらは運動中にエネルギーを作り出すために利用されます。筋グリコーゲンは、その貯蔵量がある一定量を下回ると著しくパフォーマンスに影響を及ぼします。したがって、そのグリコーゲンを節約するためにも運動中に糖質を補給することがよいとも言われています。