Shotz Sports Nutrition

栄養補給のうそ、ホント by ドクター彦井

彦井浩孝 画像
彦井浩孝 Ph.D.(博士)(運動生理学・運動栄養学)
勘違いや間違いだらけの補給のあれこれを分かりやすく解説します。
Vol.6 この秋「グリコーゲンタンク」を満タンにしてレースに臨みましょう
 すっかり涼しくなり、スポーツを行うには最適な季節となりました。「スポーツの秋」ですね。この秋も各地でランニングなどの大会が多く開催されています。
 さて、10月に開催されたある100キロウルトラマラソンに初めて挑戦するランナーから相談を受けて、栄養補給のアドバイスを行いました。フルマラソンの経験は少なくないものの、栄養補給については常に試行錯誤されていたようで、毎回、胃腸の調子を崩していたとのことでした。
 完走に向けてのトレーニングの中では、特にロング走の際にアドバイスをもとに糖質と水分摂取のシミュレーションを行っていただき、これまで糖質と水分をいかに多く摂り過ぎていたかを認識していただきました。
 レース本番は、雨降る一日となりましたが、気温が低く発汗量が少なくなることもあり、水分摂取については摂り過ぎないようにだけ気をつけ問題ありませんでした。また涼しい分、胃腸への負担が減ったことも幸いし、糖質摂取についても事前に設定した補給プランを実行し、結果、胃腸の調子を崩すこともなく、見事、初完走を果たされました。
 ところで、アメリカスポーツ医学会が2016年に発表したポジションステートメント(公式声明文)「栄養と競技パフォーマンス」では、90分以上を要するスポーツにおいて、競技前にカーボローディングによってグリコーゲンの蓄積を促しておくことはパフォーマンスにとって有意義であるとされています。レース前48時間にわたる糖質主体の食事を摂ることが筋グリコーゲンの蓄積を促します。また、睡眠中に多く消費される肝臓グリコーゲンをレース直前1~4時間前の糖質摂取で補っておくことも有効です。このことは10時間以上に及ぶウルトラマラソンであっても非常に重要です。これらのアドバイスも今回のよい結果につながったのかもしれません。
 レース前48時間で行うカーボローディングでは、1日(24時間)で体重1kgあたり10~12gの糖質主体の食事を摂ることが筋グリコーゲンの貯蔵に最適な量とされています(アメリカスポーツ医学会「栄養と競技パフォーマンス」、2016年)。また、レース直前1~4時間前には体重1kgあたり1~4gの糖質摂取が肝臓グリコーゲン蓄積を促すと考えられています。shotzエナジージェルには1個当たり約30gの糖質(マルトデキストリン)が含まれています。レース前のカーボローディングでもshotzをうまく活用することで、「グリコーゲンタンク」を満タンにしてレースに臨むことができます。この秋のレースに向けて、パフォーマンス向上のためにぜひ実践してみてください。

Vol.5 疲労との闘い:エネルギー補給の基本
 暑さが少し和らいできました。とはいえ、まだまだトライアスロンシーズンは続き、その一方でマラソンシーズンも近づいてきています。少しずつ過ごしやすくなる中ではトレーニングの効率も上がります。トレーニングの質を高めるためにも、しっかりとした栄養補給が必要です。今回はエネルギー補給の話題です。
 運動中に消費されるエネルギー源の主なものは糖質と脂質です。運動強度や時間によってそれらが使われる割合は異なります。フルマラソンを4時間切るペースで走るランナーでは、全エネルギー消費量のおよそ7割から8割ぐらいは糖質によってまかなわれます。サブスリーで走る人になれば糖質消費の割合がさらに増え、5時間ぐらいで走る人では6割から7割ぐらいになるでしょう。
 いずれの場合も、運動中に消費されるエネルギー源の主体は糖質です。しかし、無尽蔵と言ってもよいぐらい豊富な脂質と比較して、糖質の体内貯蔵量は限られています。筋肉や肝臓に蓄えられている貯蔵型の糖質、グリコーゲンと血中に存在するブドウ糖(血糖)だけです。このことから、運動中は糖質を補給する必要があります。
 しかも、筋肉に蓄えられているグリコーゲンが消耗すると疲労感が強くなりパフォーマンスにも影響が出ます。したがって、できるだけグリコーゲンを節約する必要があります。ここに、疲労を抑えてパフォーマンスを維持するための糖質補給の意義があるのです。
これまでの研究では、1時間に60グラム程度の糖質補給が最もグリコーゲンの節約効果があったと報告されてます(Wallisら。2007年)。60グラムの糖質はショッツエナジージェル2個分に相当します。また、アイアンマンハワイに出場した59名のトライアスリートを調査した結果、平均で1時間当たり62グラムの糖質を摂取していたことがわかりました(Pfeifferら、2012年)。 しかも、フィニッシュタイムは糖質摂取量に反比例してよい結果を示しています。
 このように、特に競技時間や運動時間が2~3時間を超えてくるエンデュランススポーツでは糖質補給が必須です。前回お話した水分およびナトリウム摂取と合わせて補給を考えることが大切です。栄養補給も競技の一部です(トライアスロンの場合は「第4」の種目です)。糖質と水分(ナトリウム)の摂取のタイミング(同時に摂ると胃腸にとって過大な負担になります)を考え、過不足ないように戦略を検討することが、疲労に打ち勝つエネルギー補給の基本と言えます。
Vol.4 暑さに負けない栄養補給の基本
 毎日、暑い日が続きます。こんな暑い日でもトレーニングやレースに取り組むアスリートのみなさんにはただ敬意を表するばかりです。トレーニングやレース中には、もちろん栄養補給は欠かせません。特に長時間にわたる場合、糖質、水、ナトリウムの適切な補給が重要となります。
 これだけ暑いと、のどの渇き以上につい水分を摂取したくなるものです。5日間で225キロ走るウルトラマラソン(気温32~40度)におけるランナーたち(74名)の水分摂取量を見ると、平均して1時間に約730mlであったと報告されています(Costaら、2013年)。発汗率は不明ですが、30度を超す気温の下では発汗率が1L/時間を超すことはまれではありません。しかし、これらのランナーの約4分の1に体重増加が見られたことから、この水分摂取量でも過剰になる場合のあることがわかります。しかも、水分摂取1L当たりのナトリウム摂取量は約0.3gとなり、ナトリウム摂取量の不足が推察されます(必要量の目安は水1L当たり2g。ショッツ・エレクトロライトパウダーなら5包程度)。実際に、42%に低ナトリウム血症(血中ナトリウム濃度が<135 mmol/Lの状態)が見られました。
 前回も述べましたが、暑さの中での水分摂取は過剰にならないように注意するとともにナトリウムの摂取量にも配慮する必要があります。加えて、糖質摂取も行う必要のある場合などはさらに注意が必要です。糖質摂取には、糖質ドリンク(いわゆるスポーツドリンク)や糖質ジェル(ショッツなど)が使われることが多いですが、ドリンクタイプのものだと必要な量の糖質を摂取するためには水分も摂らざるを得ず、水分摂取が過剰になってしまいます。その点、少ない容量で必要な糖質を摂取できるジェルタイプは有効です。
 9名のトライアスリートに糖質ジェルを摂取させて、パフォーマンスへの効果を見た研究報告がありますが(Sarebanら、2016年)、この研究ではトライアスリートに糖質ジェル(27g)と合わせて水分摂取(300ml)も行わせています。この結果、胃腸系に不具合が生じたことが指摘されています。つまり、糖質ジェルと水分摂取を同時に行ったことによって、胃腸に過剰な負担をかけてしまったようです。
 上述の水分摂取過剰とナトリウム摂取不足による低ナトリウム血症を防ぐと同時に、胃腸系のトラブルを回避するためにも、水分ととナトリウムの摂取量には配慮し、また糖質ジェルは水分と一緒に摂取しないこと(ただし、口をゆすぐ程度ならよい)が、暑さに負けない栄養補給の基本と言えます。
Vol.3 水分補給の最強パートナー「ナトリウム」
 運動には汗がつきものですが、暑くなってくるとその量(発汗量)が増えてきます。みなさんは、ご自身の運動中の発汗量をご存知ですか?これは簡便なテストを行うだけで推測することができます。まず運動前に体重を測ります。運動(1時間程度が望ましい)を行って、その直後に汗をしっかりとタオルで拭いてからもう一度体重を測ります。測定時はできればウェアを脱いで行うとより正確です。そして、運動前後の体重差を1kgあたり汗1Lに置き換えるとおおよその運動中の発汗量になります。もし運動中に何か水分を摂ったとすればその量を加えます(たとえば体重減少量が1kgで500mLの水分を摂ったのであれば1+0.5=1.5Lとなります)。最後に、運動を行った時間で割って1時間当たりの発汗量、すなわち発汗率(L/時間)を求めます。このテストを実際に競技が行われる同じような環境(気温、湿度など)と強度で行えば、競技中の発汗率を見積もることができるでしょう。
 運動中は筋肉のエネルギー代謝が促進されることにより熱が作り出され体温が上昇します。これに環境からくる熱(暑さ)が加わり、さらに体温が上昇します。このとき、体温上昇を抑える働きとして発汗作用が起こり、汗をかくことによって体温上昇を抑えようとします。しかし、水分補給を怠るとこの働きが不十分となり、体温の上昇を抑えきれずパフォーマンスが低下するばかりか高体温症や熱中症を引き起こすことにもなります。また、水分補給不足(脱水)は血液量を減少させ、結果、心臓循環機能に負担をかけることになり、これもパフォーマンスを損なう要因です。さらに、脱水は胃の内容物の腸への排出を損なうため、エネルギー不足になることもあります。一方で、高濃度糖(8%以上)のスポーツドリンクや、食物繊維、脂質、たんぱく質などの含まれる飲料を摂ることが水分そのものの小腸での吸収を妨げることになりますので、水分補給を行っていても脱水になる恐れがあり悪循環を助長しますので注意が必要です。
 水分補給量の目安は発汗量の2分の1から3分の2程度です。競技の場合、その量を練習中に試してみてお腹の調子が大丈夫か確認してから実践しましょう。また、水分補給には単なる水だけでなく、ナトリウム(食塩)を加えると小腸での吸収が促進されます。ただし、ナトリウムの量は多すぎても水分吸収を妨げますので、目安として1Lの水に加えるナトリウムの量は2000mg(食塩相当量約5g)以下にします(たとえば、ショッツ・エレクトロライトパウダーなら5包以下)。水とナトリウムの最強コンビで水分補給は最適なものとなります。
Vol.2 運動中に補給することが必要な栄養素とは何でしょうか? Part2
 スポーツや運動において必要な栄養素は、まずはエネルギー源となる糖質です。それを補給することは、パフォーマンスに直結することからも競技戦略や運動内容と同等に考慮する必要があります。競技時間の長いエンデュランスポーツ(持久スポーツ)やチームスポーツにおいては特に重要です。
 運動中には糖質以外にも摂取する必要のある栄養素があります。それは糖質同様に運動中に消費される水分とナトリウムです。水分とナトリウムは汗として体外に排出され、特に暑い環境の中では発汗量が多くなって体内の水分とナトリウムの損失が大きくなります。糖質は体内に蓄えられている分では限りがあり不足が生じるため外部から補給する必要がありますが(特に競技時間が2時間を超える場合など)、水分とナトリウムについては損失した分を取り戻すために摂取する必要があります。
 その一方で、運動中に摂取すべきでない栄養素というものもあります。たとえば、日常の食生活では不可欠とはいえ、たんぱく質や脂質、食物繊維などが含まれている食品を運動中に摂取するとお腹の調子を崩したり、腹部の不快感や腹痛の原因になります。これは、暑さの中、あるいは競技または運動時間が長くなればなるほど深刻になります。最大で17時間を要するアイアンマントライスロンでは実に30%のトライアスリートがレース中、胃腸に深刻な問題を抱えていると言われています。冬場のマラソンでは4%程度と言われますから、いかに暑さと競技時間の長さが胃腸に負担をかけるのかが理解できますす。そこに消化に時間のかかるたんぱく質や脂質、食物繊維などを摂取することで、その負担に拍車を掛けてしまうことは明らかです。
 いくら最適にトレーニングを行い最善のコンディションで競技に臨んでも、栄養補給戦略が不適切だとそれらの努力も台無しになりかねません。最高のパフォーマンスを発揮するためにも、今一度、栄養補給戦略を見直したいものです。
Vol.1 運動中に補給することが必要な栄養素とは何でしょうか? Part1
 運動中に栄養素を摂取する栄養補給の考え方には、「運動中に体内から失われる栄養素の補充」が基本になります。では、「運動中に体内から失われる栄養素」にはいったいどんなものがあるのでしょうか?
 運動中のエネルギー源は、主に糖質と脂質です。前者は血中を流れるブドウ糖(グルコース)と、筋肉や肝臓に蓄えられているグリコーゲンです。後者は、同じく血中を流れる脂質(中性脂肪や脂肪酸など)と、皮下脂肪などの脂肪組織に蓄えられる中性脂肪が主なものとなります。同じエネルギー源でも、糖質は体内に保存されている量が少なく、脂質はやせている人でも十分に多く保存されているところが大きな違いになります。
つまり、運動中に体内からより失われやすいエネルギー源である糖質を補給する必要があると言えます。逆に脂質は豊富に存在するわけですから、あえて補給する必要はないと言えます。また、これらのエネルギー源が利用される際にはビタミンやミネラルが酵素の働きを助ける補酵素として使われますが、これらは普段の食事で過不足なければ補給の心配はありません。
 エンデュランスポーツ(持久スポーツ)における糖質補給は今や常識と言えます。チームスポーツやパワー系スポーツでも試合の合間や競技前に糖質を補給する場面がよく見られます。マラソン参加者の4割以上がレース後半で「壁にぶち当たる(ヒッティングザウォール)」を経験していると言います。そして、その原因が筋グリコーゲンの枯渇にあることが知られています。
 筋グリコーゲンは、筋肉に蓄えられている糖質(ブドウ糖)のことです。グリコーゲンは肝臓にも蓄えられています。これらは運動中にエネルギーを作り出すために利用されます。筋グリコーゲンは、その貯蔵量がある一定量を下回ると著しくパフォーマンスに影響を及ぼします。したがって、そのグリコーゲンを節約するためにも運動中に糖質を補給することがよいとも言われています。